大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和54年(ネ)714号 判決

二 民法五〇一条但書五号一項本文は、保証人と自己の財産をもって他人の債務の担保に供した者(物上保証人)との間においては頭数に応じるのでなければ代位できないと規定するが、これは、保証人の責任と物上保証人の責任とを別異に取り扱わず、平等の割合による負担部分が存在するとして、頭数による代位を認める原則を示したものである。このことは、同号一項但書に「保証人ノ負担部分」という文言が用いられていることからも窺い知ることができるが、負担部分という観念は共同して責任を負うべき複数者の間の内部関係にほかならないから、保証人と物上保証人との間においても特約により任意に負担部分を定めることを禁止されるいわれはなく、かかる特約のあるときは、代位の効果もまた、特約による負担部分にしたがって定まるものといわなければならない。

ところで、保坂が訴外会社の訴外金庫に対する借受金債務を担保するため、訴外金庫に対し、連帯保証をし、かつ、本件不動産について抵当権を設定したこと、及び被控訴人と訴外会社に対する求債権の残高に対し年一八・二五パーセント以内の割合による損害金を徴収できる旨を約したことは、前記のとおりである。そして、≪証拠≫によれば、被控訴人は信用保証協会法により設立された法人であるところ、保坂は、昭和四五年七月三一日、被控訴人に対し、訴外会社の被控訴人に対する求償債務の連帯保証人として、被控訴人の定款、業務方法書及び信用保証委託約款の定めるところにしたがい、必ず債務弁済の義務を履行する旨を約していること、被控訴人の信用保証委託約款五条四項には「保証人は、被保証人の協会に対する求償債務について、被保証人と連帯し……て弁済の責に任ずるものとする。」旨、同条五項には「保証人は、被保証債務を弁済しても協会に対し求償権を有しないものとする。」旨それぞれ定められていることを認めることができ、この認定に反する証拠はない。これらの事実に徴するに、右約款五条四、五項は、被控訴人には負担部分がないとする特約と解するに十分であり、したがって、被控訴人と保坂は、右同日、被控訴人には負担部分がなく、被控訴人は、保坂に対し、被控訴人の訴外会社に対する年一八・二五パーセントの割合による損害金を含む求償権をすべて行使することができる旨を約定したものと認めることができる。

次に、控訴人の主張1(原判決書七丁裏六行目ないし八丁表四行目)の事実は当事者間に争いがないところ、控訴人は、右認定の約定は登記なくしては利害関係ある控訴人に対抗することができず、少なくとも損害金についての約定は、民法五〇一条但書一号、同法一七七条の趣旨に鑑み、登記なくしては被控訴人の代位弁済後に本件不動産につき利害関係を生じた控訴人に対抗することができない旨主張する。しかしながら、被控訴人が代位するのは訴外金庫の有する抵当権(及びその被担保債権)であり、これは訴外金庫のための抵当権設定登記(成立に争いのない乙第四、第五号証)に明示されており、また代位の効果も右抵当権の範囲を超えるものでない以上、後順位抵当権者(控訴人)に対する公示としては、一応それで十分である。右抵当権に関する登記のほかに、代位をなしうる保証人(被控訴人)と物上保証人(保坂)との間の内部関係にすぎない右の約定まで登記しなければならないとするほどの必要性は見いだし難い。

(岡松 賀集 並木)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!